パンツに釘

小学生の時、自宅の近くに大きな公園ができました。
その公園には、立派な池があり、水も澄んでいて遊ぶにはもってこいの場所でした。
その日も、兄と兄の友人の後ろにくっ付いてまわる状態で、その公園に遊びに行ったのです。
しかし、何をするにしても弟の存在が邪魔だったのでしょう。
兄は、公園の池の中に入ろう!と僕に優しく声を掛けてきたのです。
(あ、やっと遊び仲間として認められたんじゃないの〜)
そんな自信までつけた僕は、パンツ一丁に変身し、池の柵を乗り越えました。

上から見ていたときは、そんなに深く見えなかったのですが、
いざ、入ってみると足がギリギリ届く位、結構深いです。
しかも、池の壁には捕まるところも無く、岸に上がれそうなポイントは30メートル程先、
そうそう、今、兄貴たちが遊んでるところまで行けば・・・って、
何であっちで楽しそうに遊んでるんだよ!?

普通だったら溺れますね、確実に。
でもご安心ください。
僕はその年、小学校のEブロック水泳大会のメンバーに選出されていました。
向こう岸まで泳げばいいんです。
ちょっと、余裕をかました僕は、
溺れたフリをしてビックリさせてやろう。
という、冗談では済まされないイタズラを思いつくのです。

でも、それがいけなかった。

「助けてー!」
手をバタつかせながら、兄達に向かって大声で叫びました。
異変に気付いた兄は、爽やかな笑顔で手を振ってくれました・・・
本当に溺れていたらどうすんだよ!!
ショックを受けつつも、リアリティが足りなかったのではないか?
と反省し、何度か浮き沈みをしてみました。
「た・す・け・てー!」
この演技はアカデミー賞ものです。
流石に半信半疑ながらも、兄と友人が池の周りを走ってきました。
しかし、あと3メートルの所で兄達はストップします。
(どうしたんだ?まさか主演男優賞候補の僕の演技がバレた?)

その時、兄の声が聞こえました。
「えぇ〜っ、俺、裸足だからこの砂利の上は歩けねーよ。」
弟の命を救うのに足の裏のチクチクで迷うなよ!!
俺はチクチクに負けるのかよ!
チクチクチクショー!!(意味不明)
こうなったら意地です。僕が勝つか、砂利が勝つか・・・
よし、もう一度沈んで焦らせてやる。
ブクブクブク・・・
・・・・
もうそろそろ、いいかな?
また、水面へ戻ろうとした時、悲劇は起きました。
水面ギリギリの所で、ガクン!と下から引っ張られたのです!
なんだ!?
カッパかな?(かわいいコックさん風)
慌てて下を見ると、池の壁から出てる釘のような物がパンツに引っかかってるではありませんか!!
顔の3分の2は沈んだ状態で、手を使って口に空気を送り、必死に助けを求めました。
「ガバガバッ!!ダズゲデッ!!」
やばいな・・・これは死んだと思いました。
走馬灯のように、兄にイジメられた記憶が蘇ります。
死因は「パンツに釘」です。
翌日の全校集会で校長先生が、
「阿部ラジヲ君は、公園の池で『パンツに釘』で亡くなりました。」
という怪文書のような説明の後、黙祷をするでしょう。

黙祷中も、全校生徒は、
「なんだよ?『パンツに釘』って?」
と、僕のことより『パンツに釘』にくびったけでしょう。

友人はその日、10回は『パンツに釘』という日本語を使うでしょう。

あ〜ヤダ!絶対死にたくない!!
その時、池の柵に人影が見えたのです。
お兄ちゃん!?助けに来てくれたんだ!
そして、ナイスアドバイスが僕の鼓膜に響いたんだ・・・

「パンツを、パンツを脱げーーーーーーー!!!!!!」

そうか!!!パンツを脱げば脱出できる!!
最後の力を振り絞り、僕はパンツを脱いだ!
いくらか水を飲んでしまい、朦朧としながらも差し伸べられた手に捕まり、
僕は一命を取り留めました。

本当に死ぬかと思った・・・

教訓:助けてくれてありがとう!さとし君!(兄ちゃんの友達)
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